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大阪地方裁判所 昭和38年(ワ)3787号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕(ヘ)最後に被告の権利濫用の主張について判断するに、<証拠>を総合すると次の事実が認められる。

被告神社はもと独立の法人格を有さず、原告宮の境外末社であつたところ、その当時から大阪名勝の一つにも数えられ、現被告代表者の先々代にあたる吉田謹治郎や先代の吉田親章はいずれも原告宮の末社詰員として神事にたずさわり神社の尊厳を確保し、また、現被告代表者の吉田正美も被告神社が戦災を受けたのち復興して神事にたずさわつてきたが、終戦後神社が国家の保護を離れ、加えるに、被告神社周辺地の市街地化が一層はげしく進むにつれて、被告神社も次第にその外見的尊厳の確保、風致の維持が困難となり、現在では、被告神社の境内地はモータープールとして、本殿の床下および両側は陶器商の商品倉庫として、それぞれ使用され、神社境内地としては好ましからざる状態にある。

一方、本件紛争の原因ならびにその経緯についてみてみるに、明治二一年五月二九日前記教会所は被告主張のように厳島神社と合祀して原告宮の境外末社として香川県神社明細帳に登録され、原告が本件土地上に社殿を建設し、境外地を他人に賃貸しその賃料および原告からの補助金等をもつて右被告神社の維持費用の一部とし、吉田謹治郎をして右末社たる被告神社の祭典行事および本件土地等の占有管理をさせていたところ、同人は明治三九年原告に無断で右境外末社を独立の無格社として大阪府に登録申請し、その結果翌明治四〇年五月二八日同府によつて右申請が許可されたことにその遠因を見出し得るのであるが、そのときは、原告宮が吉田謹治郎に対して右所為を叱責するとともに同人との間で従然どおりの本宮末社関係にとどまる旨を確認させることによつて一応ことなきを得たのである。その後昭和八年二月ごろ、当時原告宮の詰員として右境外末社の占有管理にあたつていた吉田親章が、またもや原告宮に無断で、右境外末社の村社昇格願を当時の内務省に申請し、そのときは、原告宮の反対で右申請が却下されるといつたいきさつもあつたが、当時は神社が国家の手厚い保護を受けていた時代であり、また、右末社も経済的には一応原告宮から自立してやつて行けたので、両者の関係はそれ以上険悪にはならず、概ね平静を保つてきたところ、終戦後宗教法人令の施行に伴い、昭和二二年に再び吉田親章が右末社を独立神社として大阪府に届出でたことから、両者の紛争は再燃するに至つた。そして、昭和二二年一二月一三日吉田親章が死亡し、ついで被告神社の現代表者である吉田正美が右末社を事実上占有管理することとなり、さらに、昭和二八年一月二一日には右末社が独立の神社として発足する意図の下に登記簿上宗教法人法に基づく法人格を備えるに及んで右紛争が拡大し、原告宮責任役員らが昭和二九年一二月来阪し右正美に対し従前の本社末社の関係を維持するように説得したが、同人がこれを拒絶したため原告もついに昭和三〇年六月三〇日役員会を開催して前記本宮末社関係を廃止することを承認決議し、これに伴う規則変更につきその旨の公告をなすと共に被告に通知し、同年九月九日香川県知事の認証を受け、ここに被告神社は名実ともに独立の神社となつたのである。その間両者の間には再三にわたつて交渉が重ねられ、原告としても紛争の円満な解決を望み、昭和三七年一二月一日には、被告に対し、被告が本件土地を明渡すならばその移転のための土地の買入、建物の築造等移転費用の一切およびその後の神社運営費として約三、〇〇〇万円の金員を支払う用意がある旨もちかけたにもかかわらず、被告はどうしてもこれを聞き容れようとしなかつた。<反証―排斥>

以上認定した事実からすれば、本件紛争の原因ならびにその経緯において、特に原告のみを非難しなければならない理由も見当らないし、また、被告神社の現状ならびに沿革がさきに認定したとおりであり、これに加えて、今日宗教の地縁性よりもむしろその精神性が重視されていることをも考え併わせると、他に被告神社が本件土地にとどまらねばならない特段の事情も見出し難い本件においては、いま被告神社に移転を強いても、これによつて被告の消滅を強いることにはならないし、また、その信者の信教の自由を不当に侵害するものともいえない。

右認定の事実によれば被告の権利濫用の主張もまた理由がない。

(3)、以上認定の事実によれば原告と被告との合意により本社末社関係を廃止したのであるから以後被告は本件土地に対する占有権原を失つたものと認められる。

そうすると、被告は原告に対し本件土地を明渡し、かつ、被告が本件土地の占有によつて原告に負わせた損害を賠償すべき義務がある。(松本保三 大隅乙郎 白井万久)

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